別れ

zuky

2012年03月17日 21:55

それまでそこではフクロウの啼き声を聞いたことが無かった気がする。
いや、あったかも知れないが、記憶の中には無い。
が、その日から何日か、その近所で聞えたのは。

その前、前日夕刻から降り始めた雪が朝には辺りを覆っていた。
兄と夜通し呑みながら語り合ったのは初めてだったか。
兄、自分、弟。
兄弟と謂えども、それぞれに感じ方に違いがあるのは仕方が無い。

それでも少しは寝ようか、と午前5時に布団に潜り込み、
携帯のアラームをセットした。
が、うっかりマナーモードにしたままだった。
普段ならマナーモードでも振動で気付くのだけれど、
その時ばかりは気付かず、部屋に入ってきた係員に起こされた。
「なんで起こしてくれないんだよ…」
と、横になったままの親父に対して心の中で悪態をつく。

雪の朝、静かに東和田を出発。
マイクロバスに巻きつけられたチェーンがガチャンガチャンとタイヤハウスを叩いた。
18号線古牧交差点前の細い路地へ向けて右折、
そこから平林街道に抜けて西進、
グランドシネマズを過ぎて信大教育学部前を左折。
信大教育学部を通ったのは業者にとってはいつものルートかも知れないが、
親父にとっては想いがあるはず。
善光寺脇を通って七曲。
この道、親父も乗せてよく走った。
静かなバスの中、上に行くに従って積雪は増える。
やがて旧バードラインとぶつかり、
観光地へ向かうなら左折のところを右折。
暫くのつづら折りを走って大峰山に。
以前、我が胎児がいなくなった時も特別に許可をもらって来たことがあったが、
それ以来。

棺が納められて行く。
それで最後だ。

待合室で待たされる。
時同じくして居た別の一族は静かに時を過ごしていた。
こちらは平常を装っている様な。

やがて呼ばれて。
僕の想像では、骨そのものはそんなには残っていないと思っていた。
けれど、意外に多くの骨が焼き残っていた。
その骨を箱に納めて。

人の魂は生き続けるかも知れないが、
人の身体はいつかは滅びる。

その日から数日の夜。
実家付近に、珍しくフクロウが啼いていた。

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